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『革命』が細々と小説を載せたり、ライトノベルを書いていて思ったことを綴ります。
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二夜連続アップ中!恐らく明日も更新があります。
次回からはとうとう最終章に突入!

「よっぽどここが好きなんだね」
 大きな岩の上に座りながら海を眺める志緒理に向かって俺は声をかけた。そこはついこの前彼女が足を滑らした場所でもある。彼女の長い髪が潮風にそよぐ。
「……ここ。私が覚えている最初の場所なんです」
 彼女はどこか寂しそうな顔をしながらそう呟いた。
「小さい頃もよくここに来たんだ?」
 俺は彼女の横に腰を下ろした。潮の良い香りが体全体で感じられた。
「そう……らしいです」
 少し間をおいて彼女はそう言った。『らしい』その言葉が俺の心に引っかかった。彼女が覚えている最初の場所はここだという言葉と、他人事のような彼女の言葉が矛盾しているように思えた。
「私、最近ここで溺れたらしいんです」
 また他人事のような言い方だ。
「それって……」
「あ、もちろん隆史さんと会う少し前のことです。その時は運良くお兄ちゃんが助けてくれたんですが、脳が酸欠になったせいなのかそれ以前の記憶が思い出せなくて……」
 思わず唖然とした表情で彼女を見つめていた。つまり彼女は俺と出会う少し前からの記憶しかなく、それ以前の記憶は何も覚えていないと言うのだ。
「何も……全然何も覚えていないの?」
 彼女は黙って首を縦に振った。
 その時、俺の脳裏にはある可能性が生じ始めていた。
志緒理が祐理なのではないか。
偶然と言うにはあまりにも不自然すぎる。祐理と同じ姿形をした志緒理。そして志緒理には以前の記憶がない。一度考えてしまったその考えが頭を離れようとはしなかった。
「志緒理さん……その、辛いかも知れないけどその時のことを詳しく教えてくれないかな?」
 もう止められなかった。俺はどうしてもそれを確認せずにはいられなかった。彼女は俺の真剣な表情に答えるように口を開いた。
「この海岸で……倒れていたんです。体中が痛くて動かなくて……何も思い出せなくて……ここがどこなのか、自分が誰なのかさえわからなくて。偶然仕事帰りのお兄ちゃんが私を見つけてくれて……」
「名前も? じゃあ……」
 彼女は黙って頷いた。俺は一瞬迷った。それが彼女を傷つけるかも知れないとわかっていた。でもどうしても核心的な質問を投げかけずにはいられなかった。
「志緒理さん。失礼だとは思うけれど一つだけ聞かせて欲しい。志緒理さんはその……憲司さんの妹だという記憶は……」
 彼女は黙って首を振った。それはつまり彼女が志緒理でないかも知れないという事だ。
「ゆ……り……祐理という名前に覚えはない?」
 俺は思わず彼女の肩を強く掴んでいた。彼女はおびえるように視線をそらしながら再び首を横に振った。
「ごめんなさい。わからないです。でも私に記憶はないけれど、私がお兄ちゃんの妹なのは間違いないです。だって私の小さい頃の写真がありますから……」
「えっ?」
 彼女の肩を掴んでいた手から力が抜けた。
「それは間違いなく……」
 今度は縦に首を振った。
 つまりは偶然ということなのか。志緒理と祐理が瓜二つなのも、志緒理がいなくなった時期と彼女が記憶なくした時期が一致するのも全て偶然だというのだろうか。それは事実を告げられた今でもそれを信じることが出来ずにいた。
「祐理さん……あの時もうわごとのように呟いていましたね……」
 悲しそうな表情を浮かべる志緒理に俺ははっとなった。たった今憲司に釘を刺されたばかりだというのに俺は志緒理に祐理を重ねてみてしまっていた。それは彼女を志緒理としてではなく祐理の代わりとしてみていたという証拠じゃないのか。
「君に……すごく似ているんだ。飛行機事故で帰ってくることがなかった俺の恋人に……ごめん」
 俺は頭を岩に頭を擦りつけるほどの勢いで頭を下げた。彼女はそんな俺の頭を優しく抱き抱えると、かすかに頭を撫でた。
 二人とも何も言わなかった。
 俺は彼女の膝の上で初めて祐理の死に対して涙を流した。
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