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『革命』が細々と小説を載せたり、ライトノベルを書いていて思ったことを綴ります。
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さて、深夜となりましたが
連載投稿型小説 第二弾!
「エノクの園 外伝 ~たこ焼きを食べに行こう~」
が始まりました!

先週からイラストをアップしてきたわけですが、
今回の小説の中にはイラストのキャラクターたちが出てきます。
ただし、ハルカと出会う前という設定のため
彼女だけは出てきません。

ではちょっと長めですが、第一章をお楽しみ下さい。
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 弾むような足音が静かな廊下にこだましている。傾きかけた夕日が窓から差し込み、分厚い本を胸に抱えながら控え目に走る少女、亜季奈を照らす。
 やがて亜季奈はその脚を緩め一室の前で立ち止まる。そのドア右肩には『瑞夏』と書かれたプレートが打ち付けてある。
 亜季奈は乱れた髪を手櫛で整え、服やスカートが汚れていないかをチェックし、眼鏡を外して曇ったり汚れたりしていないかを念入りに確認する。そして問題がないことを確認すると、ゆっくりと深呼吸して高鳴る鼓動を僅かに押さえつけた。
「瑞夏お姉様。亜季奈です」
 小さく息を吸い込んで、声が揺れないように一気にドアに向かって声をかける。亜季奈は瑞夏の部屋には幾度となく出入りしていが、瑞夏に良く見られたいと思う気持ちからか、どうしても部屋にはいる時は緊張してしまう。
「……どうぞ」
 僅かな間を開けてドアの中から返事が返ってくる。ここでいきなりドアを開けたりはしない。そうしたいのはやまやまだが、それでははしたなく見えてしまう。急ぐ気持ちを抑えつつ一呼吸置いてノブを回す。
「失礼します」
 ベッドの上には長い深紫の髪を後頭部で綺麗にまとめ上げた少女が座っていた。綺麗な顔立ちのその少女はスタイルに至っても申し分なく、豊満なバストがすれ違う人の視線を釘付けにする。
「あ、聖……」
 亜季奈の口から漏れた言葉には落胆の色が混じっていた。亜季奈としては瑞夏と二人だけで会えるものと思っていたのだが、思いがけない先客がベッドに腰掛けていたからだ。だがその気持ちも、もう一人の少女の姿を見れば綺麗さっぱり吹き飛んでしまう。
 長くて綺麗な金色の髪と透き通るような真っ白な肌の少女がソファーに座り、真っ直ぐに亜季奈を見ていた。彼女が亜季奈の慕ってやまない瑞夏だった。残念なことに聖と比べるとバストに関しては貧相に見えてしまうが、スレンダーなスタイルは黒い服と交わって綺麗なシルエットを形作っていた。テーブルに置いてある紅茶がどことなく優雅さを醸し出している。亜季奈は瑞夏と目が合うだけで体がほてるような気がした。
 何度見ても天使みたい。亜季奈はそう思った。
「アキ。いらっしゃい。どうしたの?」
「こんにちは、お姉様。聖も……少し聞きたいことがあるの」
 そう言いながら亜季奈は瑞夏に抱きつくようにソファーに座ると、胸に抱えていた本を膝の上に広げだした。
「はい、どうぞ」
 聖は慣れた手つきでカップに紅茶を注ぐと、亜季奈の前に差し出した。そして瑞夏の飲み残した紅茶をお湯で丁寧に濯ぎ、新たに紅茶を注ぎ直した。
 テーブルの上にあるバスケットにはクッキーが並べてある。カップからは果実の良い香りが漂っていた。今日はアップルティーのようだ。自分ではなかなか飲まない紅茶だが、瑞夏の部屋にはこういった楽しみもある。
 一通りのもてなしを終えた聖は、ベッドに再び腰掛け亜季奈の本に視線を向けた。
「これなんだけど……どんなものなのか、お姉様わかります?」
 その本は古代民族の食文化について書かれた本だった。そして亜季奈の開いているページには丸くてマカロンのような、はたまたスコーンのような食べ物が描かれている。
 瑞夏は亜季奈の膝の上から自分の方へと本を滑らせると、指でなぞりながら説明書きを読み始めた。
「なになに……たこ焼きとは、球状または半球状の形をしており、生地の中に海産物であるたこを入れて焼き上げたもので、そこへ野菜や果物から作られる甘辛いソースをかけて食べる。島国日本の主に大阪という都市で好まれていて、食事にはもちろん、おやつや酒の肴としても食べられていた……たこ焼き。主食にもおやつにも酒の肴になるって……どんな食べ物よ? ひーちゃん知ってる?」
 瑞夏は聖に手招きする。遠巻きに見ていた聖からはたこ焼きの挿絵までは見えていない。膝の上から聖に見えるように本を移動させる。聖は近付いて挿絵が載っているページをじっくり見るが、やはり知らないらしく申し訳なさそうに首を振った。
 二人の視線が亜季奈に集まったが、そもそもそれを聞きに来た亜季奈が知るわけもなく当然のように首を振る。三人は同時に意気消沈した。
 再び亜季奈は瑞夏から本を受け取ると、他にたこ焼きについて記述されたページがないだろうかと索引に目を通し始めた。実のところ亜季奈は、たこ焼きについてそれ程興味があったわけではない。ただ瑞夏の部屋に来る為の口実として丁度良かっただけだった。だからこの本についてもじっくり読んだわけではないし、もしかしたら他のページに記述があるのかも知れないと思った。
「うーっ! 気になる!」
 突如瑞夏が大きな声を上げた。
「気になるって……たこ焼きがですか?」
 口に含もうとしていた紅茶をゆっくりとテーブルに置き聖はそう尋ねた。
「そう! たこ焼きよ! たこ焼き! 一度気になりだしたら頭を離れないじゃない!」
 瑞夏は人差し指を立てて、当然とでも言うかのような仕草でそう主張した。
「でもお姉様。お姉様も聖も知らないんだったら、あとは先生に聞いてみるくらいしか……」
 たこ焼きの記述は残念ながらあれ以上は見つからなかった。亜季奈は本を閉じテーブルの上に置く。
「いえ、こうなったら実際に食べてみるまで収まりがつかないわ」
 全く無茶なことを言う。誰も知らない食べ物をどうやって食べるというのだろうか。そもそも先生に聞いたところで答えが返ってくるとは限らない。
「無理ですよ瑞夏様……例え作り方が分かったとしても、たこという生き物はとっくに絶滅していますから」
 たこ焼きと言うからには、たこがこの食べ物のメイン食材で言うことは言うまでもない。そのたこが手に入らない以上、たこ焼きを作ることは不可能だった。
「むーっ……そうだ! あれよ! あれがあるじゃない。確か今日は満月だったわよね?」
 伸びるようにソファーにもたれていた瑞夏は、急に閃いたかのように起きあがり再び人差し指を立ててそう言った。亜季奈は壁に貼ってあるシンプルなカレンダーに視線を向ける。計算するまでもなく、カレンダーには月の満ち欠けが印刷されている。瑞夏の言うとおり今夜は満月のようだった。
「そうみたいですね……でも、それがどうかしたんですか?」
「瑞夏様……駄目ですよ?」
 聖は瑞夏に向かって小さく睨みを効かせてそう言った。彼女には瑞夏が何をしようとしているかが分かっているようだ。
「別に悪いことに使うわけじゃないからいいでじゃない。ひーちゃんだってたこ焼きがどんなものか気になるでしょう?」
「それはそうですが……」
 聖は少し控え目にそう言う。その様子を見て瑞夏は予想通りという表情を浮かべる。
「じゃあ決まり! アキも良いわね?」
 亜季奈は未だに状況を飲み込めていなかった。紅茶のカップを片づけながら聖が小さく呟いた。
「瑞夏様……本当にたこ焼きを食べに行くつもりらしいわね。言い出したら止めても聞かないんだから……」
「え? えええ?」
 思わず間抜けな声を上げてしまう。誰も知らない食べ物をどこにどうやって食べに行くというのだろうか。亜季奈の頭の中を疑問が駆けめぐっていた。
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Comment
こちらではお初です☆
書き込みはしなかったけどちょくちょく見にきてるよー

新作始まったね('-^*)
カワイイ女の子たくさん出てきたね~
みんな少女ってかかれてるけど瑞夏だけ歳が離れてるのかな?
私のイメージだと瑞夏が高校生、他の子は小学生くらいかなと勝手に予想w
はずしたかな?

これからくいだおれ太郎とか出てくる?!と思うとドキドキするよ!
続きが楽しみです☆
多々良 2008/05/14(Wed)21:28:32 編集
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