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『革命』が細々と小説を載せたり、ライトノベルを書いていて思ったことを綴ります。
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今回で雪が溶けきる前に(仮)は最終回!
結局仮名のまま最後まで来て、そのままでいいかなと思いました。

アイデアの種だけで突っ走ってみるという試みでしたが、
やっぱりまだまだ未熟なり……

何より主人公「隆史」が動かない動かない(笑
その分、志緒理が予定よりもアクティブに、
そして……不幸に(笑

最終話は予定していた結末と違いましたが、
それを楽しむのも突っ走りの魅力なのかも!

ではでは、「雪が溶けきる前に 最終話」お楽しみ下さい!

「ゆ、祐理……」
 俺はそう呟いてから後悔した。それは今まで志緒理として過ごしてきた彼女を否定するもののように思えたからだ。
「隆史さん……お兄ちゃん……私……」
 彼女の顔色が瞬く間に青くなっていった。そして崩れ落ちるようにドアに寄りかかった。
 慌てて俺は彼女に駆け寄る。辛うじて受け止めたところで、彼女の体温がひどく熱いことに気付く。
「憲司さん! すごい熱ですよ!」
 慌てて駆け寄ってきた憲司は彼女の額に手を当てると、あまりの熱さに手を一瞬引っ込める。
「隆史君。君は救急車を呼んでくれ!」
 憲司は彼女を抱きかかえると自分のベッドに寝かせ、台所へ走り去った。
俺は言われたままに憲司の部屋に備え付けてある電話から救急車を呼ぶ。昼間はそんな様子はなかった。風邪にしては咳やくしゃみもしていなかったように思えた。それにこれだけの高熱はそうそう出るものではない。
「もう……もうどこにも行かないでくれ……せっかくまた出会えたのに……生きて出会えたのに……」
 俺は彼女の横たわるベッドの側で彼女の手を握りながら強く祈った。
 救急車が着たのは恐らく二十分くらいしてからだろう。だが俺にはその時間が途方もなく長く感じられた。それは憲司も一緒だろう。
 
 次の日になっても彼女の意識は戻らなかった。
 ウィルス性の脳炎。それが医者の診断だった。そのウィルスがどこから着たのかはもちろん分からない。彼女はそのまま入院生活を送らなければいけなくなった。
「精密な検査を行うには一週間ほどかかってしまうらしい。だがそれじゃ手遅れになりかねない状態だ……」
「そんな……手は、手はないんですか!」
 彼女の病室の前で俺は憲司のジャケットをすがるように掴んでいた。そんな俺の肩に憲司がそっと手を置く。
「あるにはあるが……確実ではないらしい。強い薬でね。それも特定のウィルス脳炎にしか効果がない。こればかりは運を天に任せるしかないらしい……」
「運を……天に?」
 任せられるわけがない。祈ろうが跪こうが、天が俺たちに何かを与え手などくれるわけがない。俺は祐理が帰ってこなかった時そう悟った。
「どうする? 体力次第では最悪……」
「薬……試してみましょう。少しでも可能性があるなら……」
 だが今は違う、俺が再び祐理と出会えたという奇跡を与えてくれた。だったらもう一度、もう一度だけ奇跡を祈ろうと思う。俺の命を捧げてもいい。俺の記憶を奪い去ってもいい。だから彼女を連れて行かないでくれ。俺はそう強く祈った。

 薬を投与してから五日が経った。
幸いなことに彼女は薬による副作用を乗り切った。炎症にも効果があった。医者の判断は正しかった。だが彼女の意識はまだ戻らない。
 俺はいつものように彼女のベッドの横に跪く。そして彼女の手を握ると胸の前に寄せ、祈りを捧げる。
 彼女の命を救ってくれた感謝を。
 再び彼女が目を覚ます奇跡を。
 クリスチャンじゃないから祈り方は滅茶苦茶かも知れないが、そんなことはきっと何の関係もない。ただ祈り感謝することが必要な気がしていた。
 五度ほど祈りの言葉を繰り返した頃、俺は握る手に微かな動きを感じた。
「志緒理!」
 俺は彼女の顔を確認した。いつもと変わりない寝顔。
「そう……だよな……」
 力無く椅子に腰掛ける。
 そのまま上を向き、無機質な天井を眺める。そしてふと最悪の結果を想像する。慌てて頭を振りそれをかき消すと、俺は立ち上がった。
 僅かに服の裾が引っかかっている感覚がした。
「し……おり……? そんな子……友達にいたっけ?」
 か細く今にも消え入りそうな声。間違いなく彼女の声だ。
「しお……ゆ、祐理!」
 俺は彼女の顔に手を当てしっかりと確認する。僅かに目が開いてる。
 急いでナースコールを鳴らす。
「目を! 目を覚ましたんです!」
 そう言い放って俺は彼女を強く抱きしめた。
「痛い……よ……どうしたの? まるでずっと会っていなかったみたいに……でも……私も長い夢を見ていたみたいな気がする……夢の中で隆史と海を見たんだ……ねえ、二人で旅行……しようって約束したよね? 私、北海道が良いな……雪がまだ溶けないで残っていると思うんだ。一緒に見に行きたいね……」
 俺の目から溢れ続ける涙。彼女は不思議そうに俺の頭を撫でる。俺は声にならない声で彼女の言葉にただただ頷き続けた。
 そして奇跡を与えてくれた天に、神に心から感謝した。
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