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『革命』が細々と小説を載せたり、ライトノベルを書いていて思ったことを綴ります。
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次回かその次でこの小説は終了します。短編ですので。
とりあえず今回は長めです! では本編をどうぞ~

「そうか……君だったら志緒理を任せられるかも知れないと思ったんだがな」
「聞きました。志緒理さん……記憶がないって……」
 憲司はため息をつくと、残念そうな表情を浮かべた。そして椅子から立ち上がると、本棚の中から一冊のアルバムを手に取った。
「あいつは昔から不運なやつでな……小さい頃にも岩場で足を滑らして足に大きな傷を作ったというのに、未だにあの岩場が好きなんだ」
 憲司はそう言いながら俺に一枚の写真を差し出した。そこには憲司と志緒理が並んで写っていた。彼女の右脛には十センチばかりの傷跡が残っていた。
「こんな偶然があるものか……」
 俺はそう呟いていた。
「偶然?」
 憲司が聞き返す。
「ははは、偶然。偶然なんですよ……あり得ない……」
 俺はなぜだか笑いがこみ上げてきた。だがそれはすぐに涙へと変わった。
「志緒理さん、俺の恋人だった祐理にそっくりなんです。でも祐理は俺がここに運ばれてくる前の飛行機事故で……初めは幻覚か何かだと思ったんです。でも見れば見るほど彼女は祐理にそっくりで……その写真だって……祐理の足にも同じ様な傷があったんです。俺……おかしくなっちゃったのかな……」
 全て言ってしまいたかった。途中まで黙って俺の話を聞いていた憲司だが、話し終わった今では目を見開き驚きの表情を浮かべている。
「隆史君……その、その祐理という女性の写真は持っているかい?」
 もちろん持っている。今まで肌身から離したことはない。俺はズボンのポケットからパスケースを取りだし、それを開いて憲司に見せた。俺と祐理が並んで写っている写真だ。
「お、おお、け、隆史君。この女性の名字は……名字はなんと言うんだ?」
「北川……ですが、それが?」
 憲司は写真を折れ曲がらんばかりに凝視している。
「これは……この女性は……志緒理だ」
 一瞬何を言ったのか理解出来なかった。今憲司は志緒理と言ったのか? 祐理の写真を見て志緒理だと。
「何を言っているんですか。志緒理さんは小さい頃からここで育ったんでしょう? 祐理は東京で俺と過ごしていたんですよ?」
 明らかな矛盾。だが小さい頃から志緒理を見てきた憲司が見間違ったりするだろうか。それとも祐理が二人いるとでも言うつもりだろうか。
「君が志緒理を志緒理として愛してくれると言った時には打ち明けるつもりだったんだが……志緒理は確かにここに住んでいた。でもそれは……小学生の時までだ。志緒理は十二歳の時やむを得ない事情で養子に出していてね。丁度父が事故で亡くなり、病弱だった母さんの収入だけじゃとてもじゃないが子供二人を養うなんて出来なかった。俺は中学を卒業してすぐに働きに出たが、それでもどうしようもなかったんだ……」
 憲司は写真を俺に差し出した。その写真には涙の跡があった。
「しばらくして俺の収入も安定しだした頃、探偵を雇って志緒理の事を調べた。その時分かったのは志緒理が北川という家に引き取られたということだけだった……君が来る少し前、ひどい嵐の夜だった。俺は潮の高さを確かめるために海辺を監視していた。本当に偶然だった。砂浜に人影を見つけたんだ。近付いてみればそれが志緒理だった。一目で分かったよ。面影が残っていたし、足に見覚えのある傷があった。志緒理は気絶していたのが幸いして水も飲んでいなかった。だが記憶だけはすっぽりと抜け落ちていたんだ」
「つ、つまり……」
「そうだ、間違いなく志緒理が祐理さんだ」
 憲司はそう言いきった。俺の体は無意識に震えていた。目からは涙がこぼれ落ち、目を開けることさえ出来ない。
「お、俺……どうすれば良いんでしょうか?」
 俺が見ていたのは志緒理の中にある祐理の面影で、でも祐理は志緒理で、志緒理を見ていなかったことでこの場を離れようとしているのに、結局は志緒理を見ていたことになる。俺はあまりの事実に事の整理が出来なくなっていた。
「俺にも……わからない。こんな事があるのだろうか……」
 二人が沈黙した瞬間。俺の背後で物音がした。振り返ったその先には半開きのドア。その隙間から志緒理の姿が覗いていた。
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