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『革命』が細々と小説を載せたり、ライトノベルを書いていて思ったことを綴ります。
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今回はちょっと時間の都合で短めですが、やっと話が進展し始めました。

 また同じ部屋だった。どうやらしぶとくも生き延びたらしい。
 起きあがろうとするが、今回は痛みで起きあがれそうになかった。動こうとしただけで背中に激痛が走る。恐らく背中から海に叩きつけられたんだろう。動くわけにも行かず、かといって一度目が覚めてしまえば定期的に訪れる痛みで眠ることも出来ない。俺はなるべく痛みの少ない角度を探して蠢いた。
それでもいつの間にか眠っていたようだ。ドアが開く音で再び目を覚ました。
「お、目を覚ましているな。全く運が悪いんだか良いんだか分からないやつだな。でも今回は心から礼を言う。志緒理を助けてくれたんだってな? 気分はどうだ?」
「……良くはないですよ。でも祐理が……いえ、志緒理さんが助かったならこれくらいは……」
 半分本当で半分強がりだった。笑顔を見せたつもりだったが、きっとひどくぎこちない笑顔だっただろう。
「あまり無理するな。医者は大丈夫だって言ってるが、その様子じゃしばらくは養生することだな。お礼と言っちゃなんだが体が本調子になるまではここを好きに使ってくれ。さて、腹が減っただろう? 何か食べたいものはあるか? 志緒理が作るって張り切ってるぞ」
「志緒理さんが作るんですか? じゃあ……フレンチトーストって頼めますか?」
 それは祐理の得意料理だった。頭で分かっていてもまだ志緒理が祐理じゃないことに納得出来ていなかった。だからこの料理の味で俺の心に決着を付けたかった。
「たぶん……作れるだろう。少し待っていろ」
 そう言って憲司は部屋を出て行った。
 
 少し控えめなノックの音に俺は小さく返事をした。その声を確認してから部屋に入ってきたのは志緒理だった。
見れば見るほど祐理そっくりで、背の高さから髪の質感に至るまでが同じに見えた。
「大丈夫ですか? 本当にありがとうございました。これ……兄から聞きました。フレンチトースト好きなんですか? 私も……好きなんですよ」
 そう言って俺に微笑みかける。大好きだった祐理の笑顔。その笑顔を見た時から俺の目は涙が溢れ出し始めていた。
その様子を痛みのせいだと勘違いした志緒理は急いで部屋を飛び出すと、憲司を呼びに行ってしまった。
近くのテーブルに置かれたフレンチトーストの良い香りが漂っていた。
やがて志緒理は憲司を連れて戻ってきた。その手には水の入ったコップと鎮痛剤。それに湿布やタオルが抱えられていた。
「痛むのか? 大丈夫か?」
「その……そうじゃないんです。なんて言うか……フ、フレンチトーストを食べられると思ったら涙が……」
 明らかに苦しい言い訳。でも本当の理由を話せるわけもなかった。怪訝そうな顔をしながらも、この涙が痛みのせいじゃないと分かると、憲司は志緒理を置いて部屋を出て行った。
「そんなにフレンチトーストが好きなんですか?」
 テーブルのフレンチトーストを引き寄せると、ナイフで切り分け一欠片をフォークに刺し俺の口元に運んだ。
「ほら、口開けてください」
 なかなか口を開けない俺に痺れを切らして志緒理がそう言う。そんなことを言われても照れ臭い。祐理にだってあまりして貰ったことがない。
「でも動けないんだから……冷めちゃいますよ?」
 ごもっとも。俺は動ける状態にはない。仕方なしに視線を彼女から外して口を開く。ゆっくりとフレンチトーストが口の中に入ってくる。ほどよい甘みとシナモンの良い香りが口いっぱいに広がった。
でもこれは祐理の味じゃなかった。一度乾いた涙がまた溢れてきた。俺は口の中のフレンチトーストを飲み込むと催促するように口を開いた。志緒理は不思議そうな顔をしながらも俺の口にフレンチトーストを運び続けた。
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